雲取山①  2013年12月20日  天気:吹雪

「西穂独標」を計画していましたが、天候が少々思わしくない状況だったため急遽日程を変更。本来行くはずだった日が予定空っぽになってしまったので、天候が落ち着いている雲取山へ計画を練り直しをします。2004年の登山から実に9年ぶり。前回は三条の湯方面からの出発でしたが、今回は三峰神社からのアプローチです。でも、まさか初日から大変なコトになるなんて・・・

 7時10分 JR池袋駅よりレッドアロー号に乗車

西武池袋線(途中より西武秩父線) に乗車し西武秩父駅へ。各駅電車でも問題ないんですが、特急電車の方が後々の時間を効率よく使えますし、特急料金が何よりも安い(750円!) ので、ここは断然!特急を使うのがオススメ。全席指定席。まずは窓席から順々に固めていくので、混雑していなければ悠々通路側の席にザックを置けます(笑) 今日は平日なのでガラガラでした。

 8時50分 西武秩父駅に到着

西武秩父線で正丸トンネルを通り過ぎた後に見えてくる秩父市代名詞の「武甲山」。すっかり雪化粧になってますね~。さてさて、西武秩父線に到着したら「三峰神社行き」の5番バス停を探しましょう。すぐ見つかります(・∀・) そのバス停で雲取山を一緒に目指す「男女(各1名) のグループさん(以下グループさん) 」と出会いました。「今日は雲取山荘に宿泊ですか?」、「えぇ一緒ですね、宜しくお願いします」。

 10時20分 三峰神社は完全な雪世界

三峰神社に向かう始発バスに乗って約1時間後に神社到着。平日と休日でバスの本数が2本違いますので確認は必ず。バス乗車中、神社に近付くにつれて雪がコンコンと降っているのが窓越しから分かります。駐車場も雪世界と化しており、ザックに着けている温度計が氷点下3度を指す・・・。

 裏手にある階段を登り登頂開始

登山口はバス停の裏にある階段を登っていくルート。雲取山方面の標識を探しましょう。出発前に最後の準備として、防寒対策用にてアウターとダウンをここで着込みます。厚手のグローブも装着。かなりの武装で乗り込まないと凍えそうな感じがしますよ。

 10時50分 行ってきます!

鳥居、そして登山届けBoxを通り、これから雪の世界へ突入します。写真じゃ分からないと思いますが、実は雪がメチャメチャ降っています。風もやや強く、顔や指を素肌のまんま放置すると痛みを覚えます。グループさんとはここで追い抜き、私は単独でお先に雲取山荘へと進みます。

 新雪パウダースノー

先行者が作ってくれたトレースがハッキリと見えるので、ひとまずコースミスはなさそうですね。絶えず降り積もる新雪パウダースノーが道や木に覆いかぶさり、辺りは真っ白な状態になっています。雪を踏んだら、「ギュッギュッ」ではなく、「フカッフカッ」って感じの音が鳴ります。

 11時40分 炭焼平って場所

炭焼窯がありましたが今は取り壊されている状態(?) 作成方法とその作業写真が載っていました。

 12時25分 地蔵峠に到着

三峰神社から3.5km歩き、雲取山荘までは残り7.5kmの距離。地蔵峠に到着し、ここら辺から30cmの積雪が足取りを重くし始め、ペースが徐々に落ちていきます。靴に積もった雪を蹴飛ばしながら歩きます。トレースの跡が新雪で徐々に消されていくのが怖い・・・

 12時50分 吹雪の中、霧藻ヶ峰に到着

霧藻ヶ峰休憩所がありますが、ほぼ休日にしか営業していない施設なのか本日は休業。そして地蔵峠から霧藻ヶ峰へと歩くその間、だんだん危うい状況になりつつあります。それは吹雪。降雪量が三峰神社の時より多くなってきました。マズイ・・・トレースが消されてしまう。

 いよいよラッセル開始です

気温は氷点下5度で吹雪。降雪量がみるみる増大し、とうとうトレースが消えてしまった!これは本当にマズイ・・・道が分からねぇ。こうなってしまったら自分の経験を活かしルートファインティングの開始です。また積雪が50cmを超え膝ラッセルも開始。疲労度が半端ないです。

 ゼーハーゼーハー言いながら「お清平」

幸いルートっぽいルートが目で追えるので、ルートファインティングはしなくて済みそう。そうして「お清平」に到着。相変わらずの猛吹雪。ラッセルで予定時間が大幅に狂います。時計を見ると1時間の遅れになってるじゃん!このままじゃ夕刻までに雲取山荘まで間に合わないぞ!

 14時10分 視界、完全に不明瞭

そんな中さらに状況が悪化。新雪パウダースノーが風に舞って前が見えなくなります。膝ラッセルで体力が異常な速さで落ち始めてしまい、体力どころか精神も疲労困憊な状態。また厚手のグローブに凍結が起こり、指先が冷える状況。現在氷点下6度・・・

 ラッセルのバトンタッチ

前白岩山の上り坂が究極的に辛く、もはや腰ラッセルの状態。1m進むのに30秒かかるほど。雲取山荘には夕刻までに絶対に辿り着けない=ビバーク決定となりました。落胆が襲う・・・と、ここで三峰神社で別れたグループさんが私の後ろにいてビックリ。男性の方が「これまでのトレース有難うございます!ここからのラッセル、私がやりますよ!」

 15時00分 懸命にラッセルし前白岩山に辿り着く

夏道でも大変とされる前白岩山の急登に積雪60cmが・・・いや、60cmじゃすまねぇぞ。トレースは完全に消え、そして刻々と迫ってくる夕刻の時間。まさに遭難一歩手前。交互に懸命にラッセルして前白岩山になんとか到着となりました。ここまでで全体の2.5倍程の時間がかかっています。30分で登れる急登に1時間30分です。吹雪は止む気配ナシ。疲労の色も隠せない。「ちょっとマズいですね・・・」、「えぇ・・・(疲)」

 どんどん悪化する天気

「この先に白岩小屋があります!」、「私もそこまで進み、一旦計画を練ります!」。今は廃屋(倒壊のおそれありと営業終了) となった白岩小屋がこの先にあり、逃げ込むなら白岩小屋が最も安全な場所となります。まぁ、そうと決まれば進むのみ!写真は一瞬前が見えた時のモノです。現在もなお吹雪いています。かなりマズイと言えるでしょう。

 15時50分 白岩小屋で別れの時が

白岩小屋に到着し作戦会議。雨風がしのげると言っても氷点下6度の世界。「これ以上進むのは危ないです!」、「いえ、私たちは雲取山荘まで進みます」、「何時間で到着の予定でしょうか?」、「おそらく2時間30分あれば着くかと・・・」。時刻は16時に迫る状況。グループさんは白岩小屋を出ました。「お気を付けて・・・」それが別れの挨拶となりました。私は小屋に戻り「小屋ビバーク」開始です。DocomoもSBも圏外!

 22時00分 冷凍庫のような寒さの中で就寝

22時になっても吹雪いています。グループさんは無事に山荘に到着したんだろうか・・・、途中で倒れてはいないだろうか・・・。室内に設置されていた温度計は氷点下5度。冷凍庫の中にいるような感じです。持参した全ての衣類を着込みます。避難者は私のみ!ここで非常食が大いに役立ちました。あ!スニッカーズがパキッて折れてもうた(驚) 施設内に毛布や布団が残されていたのには驚きましたが、全て濡れてしまって使用不可。

グローブは完全に凍結。靴紐もガチガチ。凍傷は防げましたが軽度の低体温症になりかけています。保温に努め、とにかく焦らず、とにかく耐えます。出発前に白岩小屋で寝泊りする可能性を考えていたので最後まで落ち着いた行動を取れていましたが、あのラッセルは完全に予定外。結局21日の3時まで雪は降り続け、気温は氷点下10まで下がりました。