奥穂高岳④

 

2014年5月3日  天気:晴れ

本日が奥穂高岳登頂の日となり体力を最大限まで回復させ挑みます。この山はアイゼンだけでなくピッケルも無ければ登頂は不可能で、また前爪の無いアイゼンも滑落の危険を高く上げてしまうため登頂はまず不可能です。そして私は単独行動。かなりハラハラした奥穂高岳の登頂を終えても、今度は帰りのバスの時間も気にしなければいけない面倒さ。本日は涸沢、横尾と経由し上高地に戻る1日です。

 4時50分 東の空から日の出

日の出は常念岳の方向からで太陽が顔を出す瞬間までジッと耐えます。風が吹いているので冷たい。

 雪質チェック!

雪質を確認するため崖に近付きますが、おっと・・・軟弱ではなく逆に固まりすぎてしまい踏むと砕ける状態。これはこれでマズイ状況だ。ピッケルは雪の奥まで差し込めばガッチリ利くようですが、アイゼンはこの雪質の状況では危険すぎるな・・・全然刺さらない。1時間程山荘で待機して様子を見てみます。

 5時45分 登頂開始です!

約1時間が経過。雪質を見て問題ないと判断し出発します。まずはハシゴとクサリが登場しますが、ここで足を滑らしたらサヨナラとなりますのでアイゼンとピッケルを利かせます。足場が非常に悪く、アイゼンとピッケルを確実に刺しながら進まないと滑る!冷や汗をかきながら今度は斜度70度はあるだろう斜面を登りますが・・・斜面と言うより壁だ。腕に力がないとここも苦しいですね。気付くと私は登攀者になっていました。

 続いて強風の中を歩きます


崖を登りきった後は緩やかな斜面に変わりますが、ここは強風エリアだったため吹き飛ばされないようピッケルを刺し耐風姿勢をとりながら前に進んでいきます。こんな所で煽られて転んだりでもしたら危ういので確実に慎重に。雪庇をかわすようにトレースが付けられているため、ひとまずは安心ですね。ラストの岩山は右から回り込んで進めばOK。山頂まではもう少しです!

 6時30分 奥穂高岳の登頂成功!

やったぜ!頂上だ!それと、氷の粒がアチラコチラから飛んでくるので素肌を出すのは危険!

ジャンダルム(正面、丸みを帯びた一番高い山) へと続く尾根に誰かが歩いたトレースがある!一体誰が・・・

こちらが吊り尾根です。前穂高岳へと伸びルートなんですが、こちらにもトレースの跡が・・・(>_<)

上高地の河童橋辺りと思われます。山頂からの景色は涸沢岳と同様で「素晴らしい」の一言です。雲も良い感じで映えてくれ、写真を撮るのには絶好のチャンス到来です。本当は奥穂高岳から前穂高岳の吊り尾根、重太郎新道を通って上高地に下山する予定でしたが、尾根の状況を見てやっぱり止めて正解だったな・・・って心底思いましたね。あれでは滑落や雪崩が起きてもおかしくない状況なので。

 7時20分 下山も要注意

下山時も当然のこと斜度70度の斜面を下りて行かなくてはいけません。バックスタイルの態勢で下山を試みますが、どれほどの恐怖感が襲ってきたことか。足を滑らせたりしたらそのまま滑落死になるでしょう。ピッケルとアイゼンを確実に雪壁に刺して一歩一歩下降していきます、途中で登る方とすれ違いましたが、「いや~降りる所見てましたよ。やっぱり見るのと実際に登るのとでは全然違いますね(汗) 」との感想が。

 7時50分 疲れ切ってバタンキュー

無事に下りてこられました。異常な疲れが襲いそのまま道の上で倒れ込みます。「お疲れ様~」「登ってどうでした?」「いや~降りるところを見ていたら怖くて行けなくなっちゃいましたよ」などなど、周囲から色々と声が飛んできます。でも、それ程あの崖はおっかないんです。もし雪のある時期に登る方がおりましたら、"細心の注意力" と、"どんなときでも大丈夫と言う精神力" の2つのソウル(笑) を持って挑んで下さいませ。

 涸沢ヒュッテまで戻ります


ザイテングラートの斜面も結構急なもんでしたが、奥穂高岳の崖と比べると大したことないですな(^o^) シリセードで一気に下りていきますが、雪が思いのほか柔らかく上手く滑っていきません。涸沢から登って来る登山者の中に長野県警の山岳警備隊の方がおりました。

 9時00分 涸沢パノラマ展望台で生ビール!

疲れ切ってようやく辿り着いた涸沢パノラマ展望台。ここで朝ご飯を頂きます。かなりお腹が空いていたので"おでん" に"生ビール" のセット1,400円を躊躇なく選択。超!美味かったです!なんか体に染み渡るって感じが本当に分かりましたね。奥穂高岳に一緒に登った方とあの苦しみを分かち合います。「あの斜面は本当に危なかったですね」「足場が突然なくなって焦りましたよ」などなど・・・お互いホッと一安心。

 9時30分 横尾を目指しましょう

バスに乗り遅れないように急いで下山します。最後に奥穂高岳を1枚パシャリ。


一緒にいた方は私が乗るバスの時間とは違うため、ここでお別れとなります。「本当にお疲れ様でした」 アイゼンを片付け、ピッケルもザックに縛り付け、そして出発。滑らないよう気を付けながら下りて行きますが、ここまで下りて来れば急斜面もないですし安全でしょう。

 10時00分 本谷橋で一度休憩

本谷橋まで来れば雪渓とは完全におさらばです。標高も一気に降りてきましたのでアウターを1枚ここで脱ぎます。太陽が上がり気温も徐々に高くなって暑い暑い!本谷橋の休憩場所ではこれから涸沢に向かう登山者の方々でごった返しており、「いよいよGWに入ったんだな~」としみじみ感じます。やっぱり平日に来て正解だったな・・・この様子じゃ本日は涸沢は激混みだろうね。

 横尾まで進みます


すごい数の登山者とすれ違いました。思うに200人~300人とすれ違ったと思います。涸沢でテントを張る人、涸沢ヒュッテや涸沢小屋で宿泊する人、そして穂高岳山荘まで向かう人、色々な方でしょうな。BC者もたくさんいましたね。雪道もだんだんと土の道に変わり、いよいよ横尾に到着です。

 11時00分 横尾に到着

最初にテント泊をした横尾に到着。かなり賑わっておりテントを張っている方もなかなかの数。この調子じゃテントが通路にまではみ出るのも時間の問題。ザックが肩に食い込み始めてきたので一度長めの休憩を取って回復させます。バス出発時刻までは余裕の到着が出来そうなため、ここからは気楽になれそうです。

 11時50分 徳沢に到着

横尾から徳沢間もたくさんの登山者とすれ違いました。徳沢に着きましたが、ここもテントの数が横尾に負けず劣らずと多い!すんごい賑わいですよ。ここで奥穂高岳と涸沢岳の登山バッチを購入しました。

 12時30分 明神館に到着

横尾から明神館までぶっ通しで歩いてきましたが、景色が全く変わらないため退屈もいいところ。鳥の鳴き声が聞こえてくるのは良いんですが、それ以外は特になし。まぁ疲れが祟っているのとお腹が減りすぎているのが問題でしょうな。明神館に到着した後はイワナを食べに嘉門次小屋に行きます。実は涸沢ヒュッテで嘉門次小屋のイワナが美味しいって情報をまた聞いたので、絶対に行ってみたいと思っていたんです。

 12時40分 嘉門次小屋にてイワナの定食を注文

嘉門次小屋に到着し、早速イワナの定食(1,600円) を注文します。注文方法は独特で、①まず座席を自分で決め、②次にレジに向かって座ったテーブル番号と注文したい商品を伝えに行く・・・と言うちょっと変わった注文の取り方です。で、イワナですがしっかり焼いてあって本当に美味しかった。あの情報は間違いじゃありませんでしたね。でも量が全然足らなかったため山菜そばを追加で注文してしまいましたよ。

 自然探勝路より上高地へ進みます


イワナが本当に美味しかったな~。昼食も混雑なく食べられたし満足です。さてさて、散歩でもしながら上高地に向かおう。嘉門次小屋から上高地まで"自然探勝路" と言う散歩道があり、メイン歩道を使うより静かな散歩をすることができます。こちらも自然の中を歩いているって感じがして良いですよ。

 梓川の流れが美しいと言われる場所

梓川が特に美しく見られる場所の1つです。確かに穏やかな流れと木々が上手く溶け込んでいて綺麗でしたね。自然探勝路を歩くとこのような場面が出てきます。多くのカメラマンや私のような登山者の方がカメラを構えて写真を何枚も撮っていました。私も当然撮影します・・・と、ここで大きな地震が発生!なかなかの振動で周辺にいた方が一斉に周辺を見渡します。雪崩が起きそうな揺れでした。

 14時15分 河童橋まで残り200m

冷たい風が吹いています。雨もパラパラ混じって雲行きも怪しい状態に変わり、案の定穂高岳連峰は雲の中に完全に隠れてしまいました。あれでは天候は最悪だ・・・何事もないことを祈るばかりです。

 14時20分 上高地に到着したのは良かったけど・・・

マジで疲れた・・・


河童橋に到着し、ここで本当に登山終了。本当に疲れた。LINEやメールを使って下山報告を同僚や親しい方へ連絡し無事を伝えます。風に混じって雨が強くなってきましたね・・・と、ここで地震がまた発生!ドーンと言う不思議な音も混じっていました。地震情報を調べると奥飛騨で震度3の地震が連発しているとのこと。

 14時55分 新宿行きのバスに乗り込みます

帰りもアルピコバスで帰宅します。15時00分発で結構ギリギリに到着となりました。帰宅はさすがに疲れるだろうと思いグリーン車を申し込みましたが、思ったよりもゆったりできずなかなか寝付けませんでした。なんせ係員が「落石がありますので注意して走行して下さい」と外で話す会話が聞こえてくるもんですから(>_<) さっきのドーンって音は落石だった可能性が大きい!

 15時15分 釜トンネルより国道158号線へ

釜トンネルを通過します。焼岳近くの崩落場所はさらに酷くなっているようで、今度地震が多発する場合は本当に通行止めの措置が取られるかもしれません。そうなると完全に上高地内に閉じ込められることに!

 18時40分 談合坂SAで休憩

帰りも休憩場所は諏訪湖SAと談合坂SAで決められています。諏訪湖SAではさすがに寝ぼけてしまい着いたことに気が付かず。次の談合坂SAではお腹が空いたこともあってバッチリの目覚め。売店でフランクフルトと炭酸飲料コカコーラの組み合わせで軽食と取ります。この組み合わせは正解でしたね。美味しかった~

 19時40分 新宿駅西口の高速バス降り場

さぁゴールの新宿駅に到着しましたよ!ここからは各自帰宅となります。私も埼京線に乗って帰宅ですが、帰りの電車も疲れるんですよね。荷物がデカいこともあり周りの人の視線が気になるし、ザックを下ろしたり背負ったりの繰り返しが多いし・・・って、いやいや、ここで卑屈になってはダメだ!あと少しだ頑張ろう!

ここまで読んで頂き本当に有難う御座います。御嶽で壊したデジカメからすぐに新しいデジカメを購入し、早速色々と撮影しちゃいました。奥穂高岳は場所が遠いだけに日帰りで行くことは不可能ですし、体力的にも相当響く山ではありますが、でも山頂で見れた景色は本当に素晴らしかったです。残雪時期でも冬山登山の装備が必須であり、また奥穂高岳の崖上りが恐怖でしたが、行ってよかったなと心から思いました。

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コメント: 10
  • #1

    通りすがりの山ガール (金曜日, 09 5月 2014 08:36)

    上高地思い出しました。
    何年か前に、白川郷→飛騨高山→松本って移動したときに、山道走ってたら突然、バスやら自家用車やら沢山出現したところですね。
    写真綺麗ですね。
    ユッキーさんの写真とても素敵でした。
    また機会ありましたら、是非、ご一緒しましょう♪

  • #2

    YukiHide (土曜日, 10 5月 2014 22:23)

    通りすがりの山ガールさん、はじめまして。

    上高地はそのルートで進むと、
    飛騨高山と松本の間になりますね。
    車がたくさんと言えば沢度や平湯辺りでしょうか?
    上高地は自然美が残るとても素晴らしい場所ですよ!

    実は御嶽で壊れたデジカメを買い直して撮影しています。
    まだ使いこなしていないため色々と調整している段階です。
    なので写真の出来具合はまだまだ何とも言えないんですが、
    綺麗と評価頂きとても嬉しい限りです!

    もしどこかでお会いしましたら、お声を掛けて下さい(^_^)
    次は天候の具合を見ててすが、
    白馬岳あたりに(後立山) に行けるといいな~と密かに計画中です。

  • #3

    ちゅーた (火曜日, 13 5月 2014 19:35)

    雪崩もこわいし、傾斜70度の雪岩もこわいっ!
    でも行ってみたいし挑戦したい(*'∀'*)!
    GWの遭難ニュースが相次いでいたので心配でしたが、ご無事で何よりです(´;ω;`)!

    がんばったぶんの素晴らしい素敵な景色ですね♡
    美しすぎるー!
    惚れ惚れしますね♪


  • #4

    YukiHide (火曜日, 13 5月 2014 21:40)

    ちゅーたさん、こんばんは。
    コメありがとうございます!

    雪崩には"偶然" にも遭いませんでしたが、
    あの雪壁はただただ恐怖の一言でした。こちらは必然(笑)
    共に神経は針のように立っていた気がします。

    GW遭難事故のほとんどが低体温症の事故でしたね。
    誰にでも襲いかかる問題だし本当に注意しないと。

    山頂からの景色は最高でしたよ~感動のあまり涙を流すほどに(^_^)
    今度は秋の紅葉時にでも行ってみようかな~と妄想中です(笑)

  • #5

    みやっち (日曜日, 25 5月 2014 23:49)

    YukiHideさん

    こんばんは!ブログに頂いたコメント読んで飛んできました!

    僕たちが表銀座に挑戦している頃にYukiHideさんもかなり過酷な挑戦されていたんですね。残雪の奥穂高はまだまだ僕の力では登れない山です。ハラハラする山レポ楽しませてもらいました。

    実はGWは表銀座と北穂高で迷っていたのですが、もし北穂高にしていたらどこかですれ違っていたかもしれませんね。

    いつかどこかの山でお会いできることを楽しみにしてます!

  • #6

    YukiHide (月曜日, 26 5月 2014 23:07)

    みやっちさん、こんばんは。
    コメありがとうございます!

    いえいえ、私もおっかなびっくりの奥穂高岳でした。
    アイゼンとピッケルの重要さを改めて痛感しましたし、
    加え雪山は想像以上の大変さと過酷さがありますよね。

    奥穂高に一緒に登った方は前日北穂高にも登っていまして、
    その方曰く、5月2日に涸沢から北穂高登頂中に落石が
    他の登山者のそばをかすめた、と恐ろしい話しを聞きました。
    幸いなことに無傷だったと聞いていますがショックが大きかったです。

    雪山シーズンはそろそろおわりを迎えますが、
    でも次は新緑、夏山の時期を迎えますね。
    私もどこかでお会いできることを楽しみにしています!

  • #7

    ちびっこ(∵ *)/″ (水曜日, 11 6月 2014 22:09)

    初コメです。
    yukihideさんのブログ読みやすいし、
    写真見てるだけで言った気分になってしまいますw

    やっぱりいいですね涸沢。今年行ってみたい場所の一つなので
    素晴らしい景色を体感したいです。
    あっその前にリュック大きいのにしないとか。。。

  • #8

    YukiHide (木曜日, 12 6月 2014 23:30)

    ちびっこ(∵ *)/″ さん、初めまして!YukiHideです。
    ほ、本当ですか!? ありがとうございます!
    なるべく見やすく読みやすくを心掛けています。

    涸沢は広くて大きな自然に囲まれていて魅力満点ですよ!
    絶対に行って損はないです!冬は雪景色が素晴らしかった・・・
    川は綺麗だし、夏は花が、秋は紅葉が待っているし・・・

    機会がありましたら、ぜひぜひ行ってみて下さい!

    ※涸沢まで全て山荘泊にすれば30リットルのザックでも十分ですが、
    テント泊を交えると30リットルじゃ苦しいです・・
    写真に写っているザックは60リットルサイズの物で、
    テント泊用にとテント機材や食器(バーナー等) が積まれています。

  • #9

    ちびっこ(∵ *)/″ (木曜日, 12 6月 2014 23:58)

    テント泊は憧れますが、この間伺った荷物の量を聞いただけでビビってしまったのでいつかのお楽しみにとっておきますww

    ひとまず登らないと!!

  • #10

    YukiHide (木曜日, 19 6月 2014 18:55)

    ちびっこ(∵ *)/″ さん、こんにちは。

    テント泊は楽しいですよ~荷物は重くなりますが。
    ※冬のテント泊で担ぐ重さは約16kg(2泊3日で)

    そうですね。徐々にってことで(^o^)
    まずは涸沢まで行って楽しむことが大事ですね!!